理事長所信

理事長所信

基本理念

本質を突き詰め、率先して変化しよう
大胆に未来を描き、恐れず挑戦することこそが青年の姿
全てがチャンス、この機会を楽しもう

スローガン

「Re DESIGN ~心を躍らせ、変革の機会を突き抜けよう~」

はじめに

 人類の長い歴史は、創造と革新の積み重ねによって現代につながり、困難に直面するたびにその叡智と勇気と情熱によって新たな時代を切り拓いてきました。特に、わが国では日本らしいイノベーションによって、第二次世界大戦における大敗から世界第二位の経済大国にまで短期間で成長し、そのプロセスにおいてはアメリカをはじめとした欧米諸国のカルチャーに積極的に馴染み、文化や経済のみならず、スポーツ界においても世界レベルの選手が様々な分野で活躍するようになりました。他方で、空間を彩るのはもてなす側ともてなされる側との協働作業であるという主格一体の精神は、日本文化の象徴であり、それを体現する型としての作法は実に奥深く、時代に合わせつつも本質は何ら変わることのない性質を持っています。このように、我が国は自ら積極的に変化を取り入れ、文化を守りながらもしなやかに強く成長する国民性を本質的に持っています。

生活様式が顕著に変化したこの1年間。未来から振り返れば今は時代の転換期であることに疑いはなく、この時代に生きる私たちが推進する運動は、本質論に立脚しながらもしなやかに変化し、青年の持つ魅力や強みが存分に輝く、大胆な挑戦であるべきと考えます。

茅ヶ崎には豊かな海と山、そしてここに住まう温かく魅力的な市民によって、マリンスポーツや音楽、芸術の拠点として発展し、世界に誇れる住みやすいまちへと成長しました。私たちが掲げる「創造と革新があふれるスローライフなまち」というビジョンに示すように、これからもこのカルチャーを次世代につないでいきたいと誰もが想うところでしょう。ただ一方で、ニューノーマルが拡がることで、都心へのアクセスの良さや、気候や環境の良さをそのまま享受しているだけでは、持続可能な茅ヶ崎ではいられません。年々凄まじい速度で技術革新が進み、そのイノベーションを積極的に取り入れて著しく成長している地方都市も増えています。人々が変化を受け入れるマインドのこの時期だからこそ、2021年は積極的に技術革新と茅ヶ崎らしさ、JCらしさを掛け合わせて、組織内外問わずに大胆な社会実験を展開し、その検証結果を地域に還元することをミッションとします。

「多様性」は即ち可能性であり、実現のキーは「デジタル」によるリデザイン

 SDGs(持続可能な開発目標)は、それまで国や地域を対象とした開発目標を、「誰ひとり取り残さない」をテーマに個人の尊重にフォーカスした行動計画へと抜本的にシフトしました。社会課題をカテゴライズして共通言語化させ、協働によって解決へと導くツールです。私たちは2019年には茅ヶ崎市との間でパートナーシップ締結を致しました。この締結は環境をテーマにしたものですが、きっかけに過ぎません。茅ヶ崎のたからである自然環境は、まさに持続可能なまちづくりに向けた様々な課題を自分事化させるための共通言語です。エコをきっかけにまちづくりにテコ入れをする目的でスタートしました。

誰ひとり取り残さない社会とは、個々人が輝く社会です。個人が自分らしく力を発揮し、連携してはじめて持続可能となります。そのキーワードが多様性であり、個々人の特徴や目標、価値観の違いを包摂できる寛容性であるといえます。

平成で一気に進んだ社会のデジタル化によって、生産性は飛躍的に高まりましたが、ローカルなまちづくりに目を向けてみれば、その活用はまだまだ進んでいません。私たちの組織も同様です。同一時間、同一空間を前提に構築されたシステムでは、そのシステムに適合しない人は取り残されます。デジタルはこの部分を突破できるツールです。

ローカルファースト×ビジネス拠点としての茅ヶ崎

 世界情勢や旅行やビジネス・ライフスタイルなどの情報を発信しているイギリス雑誌『Monocle』で、「世界のベストスモールシティ25」として茅ヶ崎市が日本で唯一選ばれました。2017年には日本経済新聞が人口20万人以上の街を対象に行った調査で、茅ヶ崎市は、老衰死の割合が男性で1番、女性で2番目に高いという結果を発表しました。海と山に囲まれ、都心へ1時間でアクセスできる立地、そして食も豊かであるという生活環境、何よりもローカルファーストに誇りを持つ地域性にあると考えます。

しかし決定的に不足している点があります。それはビジネス拠点としての茅ヶ崎のブランドです。茅ヶ崎市の財政収入は住民税に依存しており、支出の99%が扶助費です。この現状認識に基づくと、生産年齢人口の流入は最重要課題です。誤解を恐れず言えば、若い世代が更に活躍できるまちへと進化すれば、自ずと税収は増え、それによって益々豊かな長寿シティへと好循環を生み出します。

では、どのように実現するか?それは、茅ヶ崎らしいローカルファーストな風土とビジネス拠点としてのイメージの両立にあると考えます。ベッドタウンとして魅力的なまちだった茅ヶ崎が、デジタル化によってビジネスの拠点にもなるのだというブランディングです。働き方やオフィスの在り方の見直しが急ピッチで進められている今のタイミングで、茅ヶ崎を拠点に経済活動を日本全国、世界を相手に推進できる環境を構築・ブランディングをして参ります。

多様性×教育環境×デジタル×地域コミュニティ

 誰もが容易に自治体比較できる時代に、「どこで子育てをするか」は若い世代にとっての関心事です。子供の教育環境を整えることは、未来への投資に外ならず、その環境開発は私たち大人の責務ですが、染症対策で浮き彫りになった課題の一つに学校教育があります。それは、オンライン公教育のハード・ソフトの環境不足です。

感染症のみならず地震や風水害などの様々なリスクが今後も存在する以上、持続可能な教育環境を整えることは、茅ヶ崎の未来に欠かせず、その積極的な姿勢を推進することは、選ばれる茅ヶ崎であり続けるためにも緊急かつ重要なテーマです。さらに、誰ひとりとして同じ学習能力・環境の子供はおらず、それぞれにとっての個別最適な教育内容・環境を整えることが、誰一人取り残さないまちづくりといえます。

ただ、このようなデジタル化・オンライン化の教育環境の整備が整えばそれで直ちに持続可能と言えるわけではありません。個別最適な教育の実現には常に個々人の生徒を支える大人の存在が不可欠であり、家庭だけで補うことはできません。現在は共働き世帯が4割以上を占め、物理的に親が子供の教育を支えることができないケースはいくらでも考えられます。このような中で、子供の教育機会を手厚くサポートするためには、地域コミュニティの支えは欠かせません。

本年度は、教育におけるデジタル化の可能性にフォーカスをしつつ、茅ヶ崎らしい教育環境を支える社会実験を実施し、多様性と包摂性が両立する誰一人取り残さないモデルを提言致します。

ダイバーシティー×組織運営

 これらの運動を支える私たちは、多様性とデジタルを軸にした組織運営を率先して展開する必要があります。組織発足後50年以上が経過し、各時代を牽引してこられた先輩諸氏が培ってきた地域の信頼やプライドは、凡事徹底による組織運営の厳しさによって担保されてきました。連綿と引き継がれる型は、時代が変わっても本質において変わることはありません。しかしながら、ライフスタイルの多様化によって会員の組織への参画意識も変化してきている昨今、所謂「JCI茅ヶ崎らしさ」を保っていくためには、メンバーの生活に寄り添いながらも本質論を守り、メンバーのエンパワメントを実現できる組織体制を敷く必要があります。

本年度は、2020年度に表明した「育LOM宣言」をはじめとして、会議時間のコンパクト化、会員の参画機会を確保するためのオンライン化の推進、機動性とフォロー体制を高めるための組織体制の整備、全国的な会員減少の波において持続可能な財政基盤を構築するための収入源の多様化など、その必要性は共有されつつも本格的にメスを入れ難かった部分に積極的に目を向け、他方で、信頼される組織として伝統に恥じない規律とコンプライアンスを守り、2030年を見据えた確かな変化を推進します。

多様性×価値の見える化×人財獲得

 人の行動を変えることが運動であり、運動を支えるのが組織であり、組織を支えるのが人財です。40歳で卒業を迎える青年会議所において、価値の根源となる人財を拡大し、育成しなければならない所以はここにあります。様々なツールが開発され、効率的・効果的に運動を発信する術は多くありますが、その内容が薄く、推進する人財に力がなければそれらのツールは生かせません。多様な背景を持つ人材が議論を戦わせ、相互理解を深め、切磋琢磨して初めて確かな運動を推進することができます。

他方で、JCへの入会動機は社業を発展させたい、人脈を増やしたい、地域貢献をしたい、誘いを断ることができず入会した等、人によって様々です。だからこそ、我々は持続的に同志を拡大し続けるためにも、価値の見える化にこだわらねばなりません。会員の視点で考えれば、時間と会費を投資することで何を得られるのかを分かりやすく伝える努力を怠り、「やってみればわかる」という姿勢だけでは、JCだけではない時代において選ばれません。JCはインプット(得る)に止まらず、人を導くリーダーシップ(与える)を学ぶ場です。そしてそのリーダーシップを学ぶためには絶対的に時間が必要です。入会する年齢は絶対に早い方が良いのです。

このような観点で、ブランディングと連動しながら様々な想いや背景をもったメンバーにフォーカスした発信をはじめとして、本年は価値の見える化にこだわった拡大活動を推進し、会員数80名を必達とします。

オンライン×リアル(地域事業)×会員交流の推進

 昨年より急速に進展した会議のオンライン化は、手間を惜しまずに膝を突き合わせ、凛とした空気の中で正論を戦わせる会議の様相を大きく変えました。対面による会議が青年会議所たらしめる要素であり、そこに注ぎ込むエネルギーの高さこそが組織の強さの根幹と言えます。会議や例会のオンライン化は時代の流れであり、空間や同時性が緩和されていくことは疑いようのない事実です。このこと自体は何ら悲観すべきことではなく、多様性の時代においては機会の確保として積極的に捉えられるべき点です。

他方で、人は人によって磨かれます。長い人生の中で青年会議所への在籍期間中はかけがえのない機会の宝庫です。オンライン化は機会の確保という意味では非常にポジティブに捉えられるものですが、会員間のつながりが希薄化する危険性も内包しており、強い組織を引き継いでいくためにも結束を高める機会の創出にはエネルギーを注ぎ込む必要があります。

本年は姉妹JCであるJCI津や親子LOMであるJCI寒川との交流事業をはじめ、春から夏にかけて茅ヶ崎らしい祭事が繰り広げられる見込みです。さらに延期された東京オリンピック・パラリンピックも開催される予定です。これらの機会は、オンラインだけではなかなか育むことのできない会員間の生の交流の絶好の機会であり、さらには地域の関係者の皆様との相互理解のチャンスと言えます。これらの機会を積極的に生かし、JC運動を支える人財・ネットワークの成長を実現します。

JCが提供する変革の機会×機会を提供できるJAYCEEへの成長

 青年会議所で過ごす時間は、会員個人の視点で言えば社業や大切な家庭への投資であり、地域の未来にとっての投資でなければなりません。入会動機の実現から始まり、さらにはその視野を広げ、視座を高め、ネットワークを拡大し、自らの可能性を拡げ、自分が想像していた以上の世界が見える人財へと成長し、その成長を次の世代や地域社会に還元し、積極的な変革を生み出していく目的があります。そして、卒業後に会員各人が持つ魅力を存分に発揮し、茅ヶ崎のまちの発展に寄与することが期待されています。

ところが、40歳で訪れる卒業制度に対して、入会から卒業までの短期間化の傾向によって、JCが提供する価値やJAYCEEに期待される姿が共有されにくくなってきているという組織的課題があります。具体的には、会員向けに提供される品質の高い研修が、入会年齢や時期も様々であることから計画的な人財育成ができているとは言えず、新陳代謝を繰り返す青年会議所でより一層効果的な仕組みに落とし込む必要があります。

本年は、今一度JCが会員に提供する価値を掘り下げ、行動力の源泉となる各人の活動目的に紐づけた研修を推進すると共に、会員がいつでもアーカイブされた研修コンテンツにアクセスできる環境を、組織的に取り組んで参ります。

デジタル化の進展でまちづくりも変化しますが、青年経済人である我々がこの時代をどう駆け抜けるかをJCを使って徹底的に考え、糧にしてほしいと考えます。そして、青年会議所を卒業された後も継続してまちづくりに参画され、地域のリーダーとして活躍されている先輩諸氏から学び、自分にとってのロールモデルに出会える機会を構築し、自然と成長し続ける人財を育成します。

インパクト(伝播)の源泉は信頼と期待

 JC運動は、伝播(インパクト)を本質とします。本業を持つ会員によって構成される青年会議所は、ヒト・モノ・カネ、そして時間という極めて限られたリソースの中で、運動の最大効果を実現しなければなりません。

ニューノーマルにおいて、市民の情報リソースは急速にオンライン化が進みました。有料ニュースメディアやSNSをはじめとして、我々が触れる情報は爆発的に増えています。これは地域においても同様です。このような状況下で、対外的には年に数回しかない機会を使ってJC運動で確かなインパクトを生み出すためには、青年会議所に対する信頼感や期待感を着実に醸成し、不断の努力で維持発展していくしかありません。奇をてらった一過性の発信ではなく、会員一人ひとりの日頃の小さな所作にこそJC運動の魂は宿り、会員が集まって事業を企画し、組織一体となって運動を実施し、その運動を時代に合わせて着実に社会に届ける。その積み重ねこそがJCに対する信頼と期待を醸成し、共感からインパクト(伝播)へとつなげて参ります。

結びに

 私たちは人生のプライオリティをどこに据えるのか。温かな家族、やりがいある仕事、豊かな友情、次世代へ繋ぐ襷(たすき)という大義・・・もはやたった一つに絞る必要はありません。自分らしく輝く人生を切り拓くチャンスを、SDGsというツールがデジタルという手法と出会って欲張りな選択肢を提供してくれているのが、今です。ありとあらゆる方面から変化の兆しをひしひしと感じる今だからこそ、失敗を恐れずに率先してチャレンジしていくことこそが青年らしい運動の姿であり、そんな姿にこそ共感が生まれ、「創造と革新が溢れるスローライフなまち」へとつながる強烈な原体験を生み出す源泉になると確信いたします。

≪事業計画≫

1.会員拡大(全体、多様性あふれる人財拡大委員会)
2.関係諸団体と連携したまちづくり(全体)
3.DXまちづくり事業(地域経済開発委員会、地域未来開発委員会)
4.人材育成事業(人財育成委員会)
5.湘南4LOMまちづくり事業(人財育成委員会)
6.しなやかな組織運営(総務委員会)
7.各種大会への参画及びLOM内外の交流事業(全体、会員交流推進委員会)
8.ブランディングの強化(JCI茅ヶ崎ブランディング委員会)